手の疾患

手の専門医について

手の専門医

整形外科専門医(日本整形外科学会認定)を取得して全身の運動器に関するオールマイティな診断・治療を行うとともに、さらに手に生じるケガや病気について特に高い診断・治療技術を有しているのが「手外科専門医」(日本手外科学会認定)です。多くの手術症例の経験をもとに、肩、腕、肘、手首、指などの上肢全体を専門的に治療いたします。

手・指は、朝起きて顔を洗うところから、食事、歯磨き、カバンをつかむ、ドアノブを回す、車の運転、物をつかむ、文字を書く、コミュニケーションを図る、そして就寝に至るまで、様々な日常動作に大きくかかわっています。
手の領域の関節や骨、神経、血管、腱、筋肉などがしっかりと連携することで、様々な日常生活、就労活動、スポーツ活動を行うことが出来ています。
また、手は人の目にも触れやすい部分(露出部)であり、見た目もおろそかにはできません。そのため、手の治療にあたっては、豊富な知識と経験、および繊細かつ高度な技術が必要とされます。

このような症状の方はご相談を

  • 指を動かしにくい
  • 指を動かすと痛む
  • 指が変形している
  • 手の痛みが取れない
  • 手の関節がこわばる
  • 手指にしこりができた
  • 手がしびれる
  • 手首を動かすと痛む
  • 手指のけがの後の痛みや腫れ
  • 肘や肩が痛む

手の領域で扱う疾患

急性期疾患(指の骨折や捻挫など)と慢性疾患(関節リウマチ、神経性疾患など)の大きく分けることができます。具体的には、腱鞘炎(ばね指、ド・ケルバン病など)、手のしびれや筋力低下をきたす末梢神経障害(手根管症候群、肘部管症候群など)、テニス肘、骨折や腱・神経損傷などの手の外傷、ガングリオンをはじめとする腫瘍性疾患、関節リウマチなどがあります。

ヘバーデン結節、ブシャール結節(手指変形性関節症)

加齢とともに手指の関節の変形が生じた状態で、指の第1関節(DIP関節)に生じるものをヘバーデン結節、指の第2関節(PIP関節)に生じるものをブシャール結節とも呼びます。第1関節の腫れ、痛みを生じ、進行とともに変形がはっきりしてきます。また、第1関節の近くに水ぶくれ(粘液嚢腫)を生じることもあります。
自己免疫疾患である関節リウマチとは異なる疾患です。一般に40歳代以降の女性に多く発生し、手の使いすぎによる負担や、遺伝性(母や祖母に同じような変形を生じている方)も関連しているといわれます。近年、女性ホルモン(エストロゲン)のバランス異常との関連が注目され、これらの指の変形は更年期障害の一種であると考えられるようになってきました。
治療は、局所の安静、テーピング、消炎鎮痛薬の内服・外用や、疼痛が強い場合は関節内ステロイド注射、半導体レーザー,超音波機器による治療を行います。
また、当院では女性ホルモン様の作用を有するエクオール製剤の内服も推奨しています。
ヘバーデン結節に伴う粘液嚢腫に対しては、穿刺のみでは再発を繰り返すことが多いため、DIP関節との「経皮的交通孔作成術」を行い、良好な成績を得ています。

ばね指

指を伸ばしたり曲げたりするのは“屈筋腱”の働きですが、“靭帯性腱鞘”と呼ばれる組織(腱のトンネル)によって、当該部位の屈筋腱が浮き上がらず効率的に力が伝わる構造となっています。使いすぎや腱鞘組織の加齢による変性などにより腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると、指の付け根に痛みや腫れ、熱感が生じます。これが腱鞘炎であり、さらに進行すると引っ掛かりが生じ、ばね現象が起こります。これが「ばね指」です。
治療は、局所の安静や装具による固定、腱鞘内へのステロイド注射、レーザーまたは超音波治療などを行います。再発を繰り返す例では、腱鞘を開放する手術(腱鞘切開)を行います。

ド・ケルバン病

ド・ケルバン病は、手首の母指側にある腱鞘と腱(長母指伸筋腱)に炎症が起こる病気です。腱鞘の部分で腱がスムーズに動かなくなるため、手首の母指側が痛み、腫れてきます。特に、母指を広げたり動かしたりすると痛みが強くなります。主な原因としては、母指の使い過ぎによって腱鞘が肥厚したり、腱の表面が傷んだりして、それが刺激を与えてさらに悪化する悪循環が生じているものと考えられています。妊娠出産期や更年期の女性に多く、また手の使い過ぎや、指をよく使う仕事で生じやすいのが特徴です。
治療は、局所の安静や湿布、装具による固定、腱鞘内へのステロイド注射、レーザーまたは超音波治療などを行います。改善しなかったり、再発を繰り返したりするような場合は、腱鞘切開術が必要となります。

手根管症候群

手根管症候群は、前腕から手掌の中央を走行する“正中神経”が手くびの手根管というトンネル内で圧迫されて起こる疾患であり、やはり妊娠出産期や更年期の女性に多く、親指から薬指の中指側の3本半の指がしびれます。しびれや痛みは明け方に強くなり、手を振ると楽になることが多いです。悪化すると、母指の付け根の筋肉(母指球筋)がやせて、母指と人差し指できれいな丸がつくれなくなります。
このような症状が強まった場合は、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの飲み薬、局所の安静、装具による固定、低周波やレーザー治療、手根管内へのステロイド剤注射などの治療が行われます。進行してしまっている場合は、手術による神経の除圧が必要になります。
当院では、局所麻酔下に手掌部近位の小切開による神経除圧術(15~20分程度)を行っています。

ガングリオン

ガングリオンは、関節周辺などの柔らかい部位にゼリー状の物質が詰まって腫瘤が出来る病気です。手の甲など手関節周囲などの関節の周辺や腱鞘のある場所に発生しやすく、米粒大からピンポン玉大の腫瘤ができます。通常は無症状なことが多いのですが、神経のそばにできると神経を圧迫し、しびれや痛み、運動麻痺などを起こすことがあります。
ガングリオンは見た目が気になる方も多いのですが、無症状ならば放置しても構いません。しかし、急速に大きくなるもの、痛みが強いもの、神経が圧迫されて神経症状があるものは治療が必要です。具体的には、ガングリオンに注射針を刺して内容物を吸引します。何回か吸引排出する治療を行ううちに治ることもありますが、繰り返し内容物が溜まるようなら手術を行います。